初心者のための手作りアロマクラフト講座(第六回):アロマクラフト作りの留意点
アロマクラフトを手作りした場合、家族や友達にプレゼントしたり、あるいは販売してみたいという方も多いでしょう。今回は、そんな方のための手作りのアロマクラフトの衛生管理や保存、販売は可能か?などについて説明します。
目次
1.アロマクラフトを手作りする時の衛生管理
2.手作りしたアロマクラフトの使用期間、保存について
3.手作りのアロマクラフトの安全性について
4.手作りしたアロマクラフトの販売について
1.アロマクラフを手作りするときの衛生管理
(1)衛生管理について
使用する器具は使い終わったら中性洗剤で洗い、しっかり乾燥させて保管しましょう。
ガラス製の容器は洗った後に煮沸消毒やアルコール消毒をするとよりよいでしょう。
作業するときは手や指などを洗浄してから行うようにしましょう。
・用具は、湯せんなどを考慮してできれば耐熱性のものを選びましょう。
・精油の中にはプラスチックを溶かしたり、材質を変化させたりするものがあります。
耐熱ガラスやステンレス製のものを使用しましょう。
*耐熱性ガラスやステンレス製のものはどうしても価格が高くなります。当サイトでは、お試しの体験コースや、一時的な使用、携帯用などにはその他のお手ごろな価格の素材も使用しています。状況に応じて使い分けることが大事です。
・使い終わった用具は中性洗剤で洗い、しっかり乾燥させてから保管します。ビーカー、ガラス棒、保存容器などは洗った後に煮沸消毒またはアルコール消毒をします。
*料理でもなんでも作る時は楽しいですが、後片付けは面倒なものです。先に記載したことは正論ですが、やはり後片付けは効率的に行いたいものです。効率的に行うためにはなぜその行為を行うのか、その行為を行わなければどんなリスクがあるかと言う原則に戻ることが重要です。
例えば、容器に汚れが付着していれば腐敗して雑菌が繁殖し、クリームなどで次に使用して肌につけた場合、菌が病気を引き起こす可能性があります。芳香剤などのアロマクラフの場合はそこまでのリスクはほとんどないでしょう。その場合は汚れを拭き取るだけで良い場合もあります。
状況に応じで常にどんな問題が起こるかを考えながら行うことが重要です。
2.手作りしたアロマクラフトの使用期間、保存について
(1)アロマクラフトの保存、使用期限についての一般的な目安
保存、使用期間については、保存するもの、保存する場所、方法、時期などにより様々なので、一律に何が正しいかを決めることは困難です。本サイトでは、何が正しいではなく、一応の目安(安全サイド)や保存方法を紹介しています。
保存期間は下記を目安に、高温多湿を避け冷暗所に保管し、早めに使いきりましょう。
保存期間の目安(日本アロマ環境協会アロマテラピー検定テキスト1級より)
・水が含まれるものはおよそ1〜2週間
・植物油などが中心のオイルやクリームは1ヶ月程度
提供している品質劣化や保存のメカニズムなどの情報も参考にして、自分なりに判断していくことが大切です。
(2)成分変化と品質の劣化のメカニズム
精油や植物油などの材料やそれぞれのアロマクラフトの成分が変化し劣化して、使用できない状態に変化するメカニズムには、主に生物学的要因と化学的要因があります。
以下の内容を理解して、その反応がおきにくくすれば長い期間保存できるようになるので、理解しておくと良いでしょう。
①生物学的要因
細菌が増殖することによって、素材が腐敗して品質が劣化し使用できない状態になることです。食品などはそのまま置いておけば腐ってしまうのはよく体験することです。食品でなくても、植物油などは腐敗する場合があります。
②化学的要因
精油や植物油などが成分変化をおこす要因は主に次の3つです。
○ 酸化
精油成分の物質が酸素と結びついて変質すること。二重結合を含む成分は酸化安定性が低い。植物油では不飽和結合をもつ成分は特に注意が必要です。
○ 加水分解
水による化合物の分解反応。精油においてエステル類に水分が混入すると加水分解が起こる場合があり、カルボン酸とアルコールに分解される。
有機酸+アルコール ⇔ エステル + 水
(カルボン酸)
精油瓶を一旦開封すると、空気が入りその中に含まれている水分(水蒸気分)と反応しやすくなります。使用する容器はあらかじめ完全に乾燥させる必要があります。
○ 重合
複数の分子が化学的に融合し、もとの分子より大きな分子量を形成する化学反応。精油成分の物質の分子が同じような分子と連続的に重なり合って、長い分子を作ること。
柑橘系精油は特に重合を起こしやすい成分を含んでいるため、通常より開封してからの使用期間が半分とされています。
(3)品質の劣化を防ぐ方法
①生物学的要因への対応
○腐敗
腐敗がおこるためには、まず増殖する細菌が存在すること、次に細菌が増殖する環境(適切な温度、空気(酸素、湿度)が整っていることが大切です。
まず、使用する容器はきれいに洗浄し、必要ならば、煮沸、アルコール消毒などを行い、細菌がない状態にする必要があります。
次に、細菌が増殖しない環境として、密封(空気に触れさせない)、冷保存(増殖する温度にしない)ことが大切です。
②化学的要因への対応
○酸化、重合
酸化や重合などの化学反応をおこすためには紫外線のエネルギーと空気中の酸素が必要です。
酸化を抑えるには紫外線をカットすることがまず重要で、そのために保存には遮光瓶をおすすめしています。
また密封していた瓶を開封すると空気とふれて酸化がすすみます。不必要に開封しないことも重要です。
(4)保管の三原則、遮光、密封、冷保存
上記、品質劣化のメカニズムと劣化を防ぐ方法で解説したように、保管の三原則は、遮光、密封、冷保存ですので、常に意識しましょう。
○ 保管場所
保管場所は、品質に影響を与えない場所がふさわしい。
空気(酸素)•紫外線•温度•湿度に注意が必要である。
したがって、しっかり蓋をして直射日光のあたる場所や暑い場所、湿度の高い所(バスルームなど)は保管場所に適していない。
乳幼児、子供、ペットの手の届く場所に置くことも避ける。
○ 保管容器
保管時には、紫外線により酸化が促進されるため、遮光ビンを選ぶとよい。精油の揮発、酸素の流入を防ぐため密封性の高い容器が望ましい。
精油はプラスチック容器を溶解、分解する可能性があるのでガラス容器を選ぶとよい。精油を希釈した手作り化粧品を入れる場合、短期間であれば割れにくく軽いという利点を持つプラスチック容器が使用されることもある。
★遮光瓶の色について
遮光瓶には茶色のもの、青色のもの、緑色のものなどがあります。どの色がいいのか、遮光効率が高いのはについてはその根拠を見つけることができていません。当サイトでは、どの色でも良いと考えています。もしわかる方がいれば情報をいただければありがたいです。
3.手作りしたアロマクラフトの安全性について
(1)使用する精油の濃度
精油(エッセンシャルオイル)は植物の成分を濃縮しているため、皮膚に使用する際は、原液では刺激が強いため、植物湯などで希釈して(薄めて)して使用することが大切です。いい香りだからだと、多く入れるぎてしまうとその刺激で体に悪影響が出てしまうことがあります。個人差や使用法によりその刺激の程度は様々ですが、日本アロマ環境協会では、多くても 全体の1%(顔など皮膚の薄い場所の場合は(0.5%)程度を目安として推奨しています。
アロマテラピーの書籍(特に海外の医療系アロマテラピーの翻訳書)の中には、もっと濃い濃度(3%〜10%)での使用や、極端な例では原液での使用が記載されているものがあります。(例えばラベンダーとティートリーは原液での使用が可能であるなど)。熟練した アロマセラピストの方などの中には、濃度などあまり気にせず使用している人もいるでしょう。
しかし、それらは、医療などの専門的な知識と使用の経験から可能なことであり、誰にでもに適用できることではないでしょう。
当サイトでは、あくまでも楽しみでアロマクラフトを手作りするための精油の使用を前提にしており、先に記載した濃度での使用をおすすめしています。
(2)使用に注意が必要な精油について
精油には有益な作用がたくさんありますが、中には使い方に気をつけるべき種類がります。
・精油の光毒性について
精油の成分が日光んどの紫外線に反応することにより、皮膚に炎症などをおこす反応を光毒性といいます。
精油例 グレープフルーツ ベルガモット、レモン
・皮膚刺激について
皮膚表面から浸透したときに炎症、かゆみなどの皮膚刺激を起こすものがあります。
精油例:イランイラン、「ジャスミン、ティーとりー、ブラックペッパー、ぺぱーみんと、メリッサ、ユーカリ
その他、妊娠中の注意など精油には様々な注意があります。気にしだしたらきりがありません。ちょっとした芳香浴にそこまで気にする必要がある必要があるのか、と思われる方もいるでしょう。どこまで気をつけたらいいか、正直難しいものがあります。
アロマ専門店や、アロマスクールを運営してきた当サイトの見解としては、特にトリートメントなど肌に使用する場合は注意が必要であり無理して使用しない、芳香浴などならあまり神経質になる必要はないとアドバイスしています。
しかし、実際のところ個人差もあり個々の例に答えることはなかなか難しいものです。現在のところ使用についての責任は、最後は自己責任の原則になるのかもしれません。
(3)その他アロマクラフト作りにおける留意点と注意事項
* 顔の皮膚は他の部分に比べて薄くデリケートなので、フェイス用トリートメントオイルは希釈濃度を薄くして作る。
* かゆみや炎症など皮膚になんらかのトラブルが起きた場合は使用を中止し、むやみに自分で薬などの処置をせず、必要あれば皮膚科の診察を受ける。
* 基材については、その特性を十分に理解した上で使用する。
万が一トラブルになってお医者さんに行く場合、かかりつけのお医者さんに精油などに対する知識があまりない場合も考えられます。使用したアロマクラフトや精油を持参した方が良いでしょう。
4.手作りしたアロマクラフトの販売について
医薬品医療機器等法(旧薬事法)により、化粧品の製造・販売は規制を受けます。そのため手作りしたアロマクラフトが化粧品に該当するかどうか注意が必要です。
医薬品医療機器等法では、薬品や食品などを大きく4つのカテゴリーに分けて分類しています。薬品(人体に大きな作用があり主に口に入れるもの)、化粧品(人体に作用があり主に肌につけるもの)、食品(主に口に入れるもの)、雑貨(それ以外)です。薬品、化粧品、食品、雑貨の順で、規制が厳しくなります。
例えば、薬品は製造及び販売とも許可が必要です。化粧品は製造は許可が必要です。雑貨は、販売、製造ともほとんど制限がありません。
・化粧品に該当するもの(一般的には肌につけるもの)は手作りして販売することができません。プレゼントすることは可能ですが、トラブルが生じた場合は責任が発生することを覚えておきましょう。
*参考: 作成したものをむやみに販売またはプレゼントした場合、薬事法に違反するおそれがあるので、ホームケアで自ら使うのみに止める。→日本アロマ環境協会では薬事法上では違法とは言い切れないものと判断し、プレゼントは可能であると解釈する。ただし注意点がある。
(当サイトで運営していたアロマテラピーインストラクターの教科書より)
・化粧品に該当しないもの(肌につけるもの以外)は雑貨に分類されるので販売可能です。ただし、製造物に関する責任(製造物責任法)は発生します。
精油を化粧品や医薬品などと混同しない。精油や作成したアロマクラフトなどを使用(特に販売)する場合は扱いに注意することが必要です。
(1)アロマテラピーの法律について
①医薬品医療機器等法(旧薬事法)
精油を化粧品や医薬品などと混同しない。精油や作成したアロマクラフトなどを使用(特に販売)する場合は扱いに注意することが必要です。
(重要な事項)
・医薬品、医薬部外品、化粧品、医療器機として誤解されるような表示や 広告、口答での説明をして販売、授与してはならない。
×ラベンダー精油は不眠症に効果があります。
×カモミール・ローマン精油には保湿作用があります。
・医薬品、医薬部外品、化粧品、医療器機などの製造業の許可を受けて いない者が業として製造(小分けを含む)してはならない。
・薬事法第十三条(製造業の許可)
「自分が使用するために自分で化粧品を作る」ということが原則で、(自己責任原則)それを無許可で作り、販売、授与することは禁止 されている。
個人が精油を使ってハンドクリームや石鹸などの手づくり化粧品などを 作り友人や知人にプレゼントすることは、薬事法上では違反と言いれないものと判断し、プレゼントは可能であると解釈する。
②製造物責任法(PL法)
製造物の欠陥により被害が生じた場合、その製造物責任者などに賠償責任が生じる。基本的な考え方は消費者の保護と救済。 たとえば、精油のビンのキャップに欠陥があり、精油が自然に漏れ出て衣類や家具を汚し損害が出た場合、これは、製造業者の責任となる。