初心者のための手作りアロマクラフト講座(第一回):アロマテラピーの基本

 今回は手作りのアロマクラフト初心者のためのアロマテラピーの基本について解説しています。この記事は当サイトが2003年〜2015年まで運営していたアロマテラピーのスクールで、アロマテラピー入門講座として開催していたもののレシピを編集しなおしたものです。
 アロマテラピーを学びたい方の入門編として。1500人以上の生徒さんに受講していただいたレシピです。
 


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目次
1.アロマテラピーとは
 
2.精油とは
 
3.アロマテラピーの歴史
 
4.精油が身体に作用する経路
 
5.アロマテラピーの利用方法
 
6.アロマテラピーの関連法規

 1.アロマテラピーとは

 
アロマテラピーって聞いたことがあるが、いまさら聞けないという方のための アロマテラピー基本の”き”です。 
 

 

(1)アロマテラピーって何でしょう?  

 アロマテラピーは植物から抽出された香り豊かなエッセンシャルオイル(精油)を様々な方法で利用し、こころやからだのトラブルを穏やかに回復し、健康増進や美容に役立てていこうとする自然療法です。  
 日本最大のアロマテラピーに関する民間団体である公益社団法人日本アロマ環境協会では、アロマテラピーを次のように定義しています。
 
アロマテラピーは、植物から抽出した香り成分である「精油(エッセンシャルオイル)を使って美と健康に役立てていく自然療法です。
アロマテラピーの目的
  ① 心と身体のリラクゼーションやリフレッシュを促す。  
  ② 心と身体の健康を保ち、豊かな毎日を過ごす。 
  ③ 心と身体のバランスを整え、本来の美しさを引き出す。
 
 こう書かれると少し難しそうですが、そんなことはありません。基本は植物のもっている香りの力を取り入れて、生活をより健康で楽しいものにしていこうということです。
 

 (2)アロマテラピーという言葉の意味は?

 アロマは「芳香」、テラピーは「療法」のことです。 植物のもっているいい香りアロマ(芳香)で、テラピー(心身を癒す療法)するという意味です。
 アロマテラピーを日本語にすると「芳香療法」になります。 やさしい香りに包まれているうちに体や心のトラブルがだんだん軽くなっていく、そんな喜びを与えてくれるのがアロマテラピーなのです。       
        aroma         therapy   
       アロマ(芳香)   テラピー(療法)     
 
           植物の香りの自然療法
 

(3)アロマテラピーの特徴は?

 アロマテラピーの特徴を簡単にまとめてみました。
 
① 古い歴史をもつが、確立されたのは新しい植物療法である。 
 芳香が体によいことは古くから知られており、5000年以上前から病気の治療に利用されていたといわれています。しかし、「アロマテラピー」という言葉が生まれたのは意外と新しく、約80年前のフランス。以降、香りを使った自然療法が改めて注目され、現在も研究が続けられています。
 
② 心身両面に作用する香りの作用を利用した植物療法である。 
 精油の香りをかぐと、人はリラックスしたり、リフレッシュしたり精神的な効果を得ることができます。そればかりでなく、精油に含まれる芳香成分を体内に取り入れることにより、体調や精神の乱れを調整する薬理効果があることが、近年、科学的見地からも実証されてきました。     
 
生活のいろいろな分野で利用が可能である。   
 身近な趣味、楽しみから、福祉や医療まで、アロマテラピーは様々な分野 で利用され、今後の発展性が期待されています。生活の中に簡単に取り入れることができるが、勉強していくと、奥が深い。それぞれの立場や場所で自分なりの利用ができる。それがアロマテラピーです。
 

(4)精油とは何でしょう。ハーブと精油の関係は?

 ハーブとは役にたつ香りのある植物のことです。そのハーブの揮発性の有効成分(芳香成分)を抽出したものが精油です。植物をそのまま利用するのがハーブ療法で、精油を利用するのがアロマテラピーです。  植物の中でハーブ(芳香植物)と呼ばれる約3500種類の中で、精油のとれる植物は約200種類くらいです。
 
 

(5)アロマテラピーはいつ頃から?

 アロマテラピーという名称は、フランスの化学者ルネ・モーリス・ガットフォセによって20世紀になってからつけられたものです。  
 でも、新しいのは名前だけで療法自体の誕生はものすごく古く、クレオパトラの時代のはるか以前にさかのぼります。紀元前3000年 古代エジプトの時代には技術はすでに出来上がっていたといわれています。
 
歴史上の香りの使われ方
〈薫香〉:香りのよい樹木や芳香植物を炊いて神々に捧げる習慣や病人を癒すものがあった。
(浸剤): お湯やオリーブオイルなどに芳香植物を浸して飲んだり体にぬったりした。
 
 

 (6)ホリスティックアロマテラピーとは?

 ちょっと難しいかもしれませんが、ホリステイックという考え方について解説します。
 
 ホリステイックとは「全体的な」「包括的な」という意味を持つギリシャ語holosに由来する言葉で、人間を心と身体が一体になったものとしてとらえるという事です。
 「ホリスティックケア」とは、病気や、不調の直接の原因だけでなく、その要因となったライフスタイルやストレスなど、心、身体、環境を全て関連したものと考えて整えていこうとするものです。
 
 *ホリスティックアロマテラピーとメディカルアロマテラピー
 アロマテラピーには大きく二つの流れがあることについて説明します。フランスのルネ、モーリスガットフォセによって始められたアロマテラピーは、フランスやイタリア、ドイツなどのヨーロッパ大陸の諸国では、精油の薬理作用を中心として医療行為の一つとして発展しました。
 一方、イギリスにわたったアロマテラピーは、マッサージを中心としたホリスティックな健康法として発展し、アメリカや日本にも伝わり現在にいたっています。
 
イギリス:ホリステイックアロマテラピー      
 ホリステイック→心と身体を含めた全体的なアロマテラピー。
マッサージ中心。マルグリットモーリー、ロバートテイスランドがもととなっている。行為者はアロマセラピスト。      
 
フランス:メデイカルアロマテラピー       
 メデイカル→精油の薬理作用を医療的なものとした。
医師の管理 のもと内服も行う。ルネ、モーリスガットフォセやジャンバルネ がもととなっている。行為者は医師 。

2.精油とは 

  精油(エッセンシャルオイル)は、植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した天然の素材です。有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質です。精油は、各植物によって特有の香りと機能をもち、 アロマテラピーの基本となるものです。
 精油1kgを得るために、ラベンダーなら花穂を100~200kg、ローズなら花を3~5トン も必要とします。大量の原料植物から、ほんの少ししか採れない貴重なエッセンスです。
 精油を安全に使うために、まず精油の性質や植物にとっての精油の働きを学びましょう。
 

 

(1)精油とはなんでしょう? 

 植物の花や葉、果皮、樹皮などの揮発性芳香成分を特別の方法で抽出したエッセンスが精油です。原料となる芳香植物は約3000種類ありますが一般に使われているものはたった200種類ほどです。 
 この芳香植物を大量に使って精油を抽出しますが、作られる量はほんのわずかです。たとえば1000kg(トラック1台分程度)ものラベンダーから採れる真正ラベンダー精油は10kg〜30kg(一升瓶5本〜15本)、有名なダマスクローズでは、おなじ量のローズからわずか100〜300g(牛乳瓶1本程度)しか採れません。 (バラの花50個で1滴)
 
 一般に販売されているアロマオイルは、植物に由来する天然の芳香物質だけでなく、合成香料や、その香料をプロピレングリコールやアルコール、植物油や鉱物油などで希釈した製品を広く含んでいます。アロマオイルは、香水や化粧品、食品に添加する香料、ポプリ作り、芳香を楽しむために広く利用されています。アロマティックオイル、フレグランスオイル、ポプリオイル、フレーバーオイルなどいろいろな呼び名があります。
 また、植物油に精油をブレンドしたアロマテラピートリートメント用のマッサージオイルも一般にはアロマオイルと呼ばれることがあります。
 本サイトでは、下記の定義でしめされた天然の芳香物質をアロマオイル(精油)として使用し、紹介しています。
 
━━━日本:AEAJ: (公社)日本アロマ環境協会の定義
 
 精油(エッセンシャルオイル)は、植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などから抽出した天然の素材です。有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質です。精油は、各植物によって特有の香りと機能をもち、アロマテラピーの基本となるものです。
 

(2)精油の特性

 精油といっても油脂ではありません。いちばん多い誤解は、精油が植物油(例えばオリーブ油)と同じようなものと考えることです。しかし、精油はこれらの油脂とはまったく別の物質からできています。精油の正体は有機化合物です。天然の化学物質が数十から数百種集まってできたものなのです。精油の特質を次にしめします。
 
①芳香性がある。
 
②揮発性である。
 
③脂溶性である。
(親油性)水にはとけないが植物油には溶ける。
 
④精油は油脂ではなく有機化合物質である。天然の科学物質が数十から 数百集まってできたもの。
 
⑤濃縮されている。
 
⑥独特の香りといろいろな効果がある。
 

(3)植物にとって精油の役割  

 私たちは精油を使うことばかりに関心がありますが、ここで一度精油が植物にとってどういうものか、どのような働きをしているのか説明します。
 
①精油が分泌される場所
 精油は植物の特殊な分泌腺とよばれるところで合成され、その近くに点在する油包(小さな袋)に蓄えられています。場所はさまざま。
 
②何のために分泌しているのでしょうか?  
・誘引効果 昆虫、鳥類を引き寄せる。
・忌避効果 抗真菌効果 抗菌効果 菌、虫などを避けるため。
・他の植物との生存競争に勝つためその種子の発芽や成長をとめたり または押さえたりする効果。
・汗のように精油を揮発させて自分を冷却し、強い太陽の熱から身を守 る働き。 (5)植物内での情報伝達としてホルモンの様な働きをしている。
・植物内で不要になった老廃物である。
 

(4)精油の製造法

 各種の植物から精油を製造する方法は、その精油の成分の特徴などの条件により、いくつかの違った製造法が選ばれます。  
 
①水蒸気蒸留法/水蒸気で蒸して香りを採る   
 現在もっとも多く使われている抽出法。原料の植物を蒸留釜にいれ、直接蒸気を吹き込んだり釜にはいっている水を沸騰させたりして水蒸気で芳香成分を蒸発させる。その芳香成分を含んだ水蒸気は冷却すると液体になり芳香成分と水を分離して精油を得る。  「
 水」には水溶性の芳香成分が溶け込んでいる。 この「水」を芳香蒸留水といい、フローラルウオーターとして広く利用される。
 
②圧搾法 /圧力をかけて芳香成分を搾りとる  
 グレープフルーツ、レモン、オレンジなど柑橘類の果皮を圧搾して採油す る方法。昔は手で行っていたが、現在では機械で圧搾する。低温で圧搾するため、熱に不安定な柑橘類などは自然のままの香りを保て る。この方法で作られた精油は品質の劣化が早いので注意する。
 
③油脂吸着法/油脂に芳香成分をすわせる
 ほとんど現在では行われていない。歴史的には大切な方法。 牛脂や豚脂やオリーブ油が香気成分を吸着する性質を利用。
 
 ・冷浸法(アンフルラージュ) 室温で行う。精製した牛脂(ヘッド)豚脂(ラード)の混合物、オリーブ油などの油脂の上に花弁をならべて花弁に含まれる精油を油脂に吸着させる。この飽和状態になった油脂を「ポマード」という。この油脂をエチルアルコール抽出して最後にエチルアルコールを除いて花の精油を得たものを「アブソリュート」ともいう。
 
 ・温浸法(マセレーション) 60〜70℃にあたためた油脂に花を加え、撹拌して油脂に精油成分を 吸着させる方法。後の作業は冷浸法と同じだが、あたためるので冷浸法よりも効率がよい。
 
④揮発性有機溶剤抽出法/芳香成分を直接溶かし出して得る
 植物の芳香成分をよく溶かし出す揮発性の有機溶剤を使用して抽出する方法。花などの植物原料を溶剤釜に入れて石油エーテル、ヘキサン、ベンゼンなどの有機溶剤で抽出する。花をはじめ植物には天然のワックス成分があり、これも芳香成分と一緒に溶かされて出てくる。
 その後芳香植物と溶剤を取り除き半固形のものが残る。これを「コンクリート」という。ここからエチルアルコールで芳香成分を取り出し、ワックス成分やエチルアルコールを除いて最後に得られたものをアブソリュート(Abs.という記号で表現される)と読んでいる。また樹脂などから上記の方法で芳香成分を取り出したものを「レジノイド」という。 アブソリュートには溶剤が少し残留することがある。
 ジャスミンの精油は蒸留法では採れないので全てこの方法で抽出する。
 
(5)超臨界流体抽出法(ガス抽出法)
 液化二酸化炭素などに高圧力を加え超臨界流体になったものに芳香植物を取り込み圧力を戻し芳香成分を得る。これを「エクストラクト」と呼んでいる。
 

(5)精油成分による作用

 精油は様々な成分を含んでおり、それぞれが複雑に関係して心と身体にいろいろな作用をします。その中でもとくに重要な作用と、代表的な精油や成分をいくつか紹介します。
 
①こころ、からだへの作用
・鎮静作用:心と身体の働きを鎮め 心身ともにリラックスさせる。催眠作用も    
おもなもの:ラベンダー(酢酸リナリル)、カモミールローマン(アン ゲリカ酸エステル)
 
・鎮痛作用 :痛みをやわらげる。   
おもなもの:ラベンダー(酢酸リナリル)、ゼラニウム(ゲラニオール)   
 
・鎮痙作用 :筋肉の緊張をゆるめる
 
・消化、食欲増進(健胃)作用:食欲を増進させる  
おもなもの:かんきつ系精油 オレンジ グレープフルーツ(リモネン)  
 
・駆風作用 :腸内のガスを出す作用  
 
・ホルモン調節作用 :ホルモンの分泌を調整する   
 おもなもの クラリセージ(スクラレオール)   
 
・刺激作用 :外部から刺激し、心と身体の活動を高め活性化する
 
・強壮作用:身体の働きを強化する免疫賦活作用 、免疫の働きを強め高める作用 、利尿作用 尿を排出しやすくする作用   
 
・去タン作用 :タンを切る作用     
おもなもの ユーカリ(1.8-シネオール) ローズマリー(カンファー)   
注 1.8シネオールやカンファーは刺激の強い成分ですので使用量や濃度に注意しましう。
 
②皮膚への作用
・収れん作用(アストリンゼント作用) :ひきしめる  
 
・保湿作用(モイスチャー作用):水分を保ち乾燥を防ぐ
 
✴︎ 皮膚へのマイナス作用
 皮膚刺激、粘膜刺激  
 精油のなかには皮膚を刺激したり粘膜を刺激したりするものがあるので注意する。滴数をまもること。
 

 (6)精油の安全性

精油(エッセンシャルオイル)は植物の花や葉、根などから抽出されたものですが、自然の状態にくらべてかなり濃縮されているので精油を使用するにあたって注意がいくつかあります。
 
① 原液を直接肌に塗ったり、飲まないようにしよう。
 
② 目に入らないように注意しよう。
 
③ 精油は引火する可能性があるので、火のあるまわりでの使用は十分に注意する。
 
④ 高温多湿、紫外線を嫌うためキャップをしっかりしめて冷暗所に保管する。
 
⑤ 子供やペットの手の届かぬ場所に保管しましょう。
 
⑥ お年寄り、既往症のあるかたのための注意事項
 基準の半分以下の量で試してから使用する。 不快であるようならば、しばらくアロマテラピーをさけたほうがよい。(一般の健康な人も同じ)トリートメントとして肌に使用していたならば、皮膚の上のブレンドオイルを大量の水で洗い流し、場合によっては石鹸を利用。
 
⑦ 妊婦のための注意
芳香浴以外の全身のトリートメントなどを実施されるときは専門家に相談する。   
 
⑧乳幼児に関する注意事項
3才未満の乳幼児は芳香浴以外はおすすめしない。3才以上の子供でも大人の2分の1を越えない量を使用する。
 
⑨ 合成オイルと混同しないようにする。
アロマテラピーで使用する精油は天然原料として抽出されたもので合成のポプリオイルとはちがう。
 
⑩ かんきつ系の精油には光毒性があるので注意する。
ベルガモット、レモン、グレープフルーツの精油には光毒性がある。(日光によって反応し、肌に刺激を与える成分が含まれていることがある)皮膚に塗布するときは外出前や外出中は注意すること。

 3.アロマテラピーの歴史

 アロマテラピーという名称は、フランスの化学者 ルネ・モーリス・ガッドフォセによって20世紀になってからつけられたものです。しかしハーブや芳香植物、精油を用いることは、それよりずっと以前から行われていました。
 むしろ、16世紀から17世紀の科学革命以前は、医学や薬学は、アロマテラピーやハーブ医学そのものであり、アロマテラピーの歴史はその大部分を医学、薬学と歩みをともにしてきたのです。
 アロマテラピーを学んでいる人の多くが、「アロマテラピーは奥が深い」といいます。それもそのはず、それは古典医学のみならず、哲学や、思想、自然観といった人類の財産の一旦にふれているからなのです。
 その様なアロマテラピー、今回は歴史を少しだけひもといていて、主な歴史のトピックを紹介します。
 

 

(1) 古代にみるアロマテラピーの源流

古代までアロマテラピーの源流にさかのぼってみれば、紀元前3000年にはその技術はすでに出来上がっていたと言われています。
 
○古代エジプトについて
 
薫香:古代の神々への感謝のための祭りの儀式に 香りのよい樹木や芳香植物を焚いて神々に捧げる習慣などがあった。  
 
浸剤:お湯やオリーブ油に植物を漬け込んで作る。 (ハーブテイー ハーブオイル)
 
ミイラづくり:(紀元前3000年頃)        
  乳香、      没薬、 ニッキ、 シダーウッド他    
(フランキンセンス(ミルラ)  
 ミイラの語源がミルラ(没薬)に由来するのも、ミイラを作るとき内臓を取り出した腹腔に香料を詰めたため。
 
○ ソロモン王とシバの女王の逸話
 旧約聖書にある。シバの女王(BC10世紀ごろ在位)がイスラエルのソロモン(BC961〜922年在位)に非常に多くの黄金、宝石、乳香、白檀(サンダルウッド)などの香料を贈った。
 
○ 古代ギリシャ、ローマを中心とした国々で西洋医学、薬学、植物学などが始まる。
・ヒポクラテス(紀元前460〜375):
 ギリシャのコス島で生まれる。医 学の祖  病気にたいしてそれまでの呪術的な手法をとりのぞいて、病気を体内の体液アンバランスや体質不調、環境の影響からおこる自然現象としてとらえた。現代にも通じる医学の基礎を築いた。  
 
・テオフラストス(紀元前373〜287):
古代ギリシャの哲学者 アリストテレスの弟子、植物学の祖。「植物誌」をあらわし、植物の分類や系統だった研究を行った。
 
・プリニウス(23〜79): 
古代ローマの博物誌家 77年「博物誌」を著した。農学、医学、鉱物学を含む全37巻の百科辞典
 
・デイオス コリデス(40〜90):
 ローマ帝国内での軍医 「マテリア メデイカ(薬物誌)」を著す。 薬物を植物、動物、鉱物などに分け、収斂、利尿、下剤などの薬理作用、機能の面から分類した。そこには約600種類の薬用植物が紹介され、解説されていてハーブがたくさん記載されている。 この本は最高の権威を持つ薬用書の古典となり、6世紀はじめに400枚の植物図をおさめた「ウイーン写本」がつくられた。この写本はヨーロッパ各地で翻訳され16世紀にいたるまで多くの人によって読み続けられた。
 
・ガレノス(129〜199):
 ヒポクラテスにつぐ最も著名な医学者。ギリシア支配下のトルコ生まれ。ヒポクラテス医学を基礎として解剖学的知見と哲学的理解によっての医学を築いた。 また。コールドクリームなどの製剤法の創始者としてしられている。
 
○ 古代ローマ皇帝ネロとカラカラの浴場
 皇帝ネロ(37〜68 在位54〜68)はバラ好きで有名。 古代ローマのどの都市でも公衆浴場があり、市民は利用をした。 また、湯上がりには、マッサージや香油ぬり、あかすりなども行われた。 216年完成したカラカラの浴場が有名。
 
○ ヘレニズム文化と東西のハーブスパイスの交易
 アレキサンダー大王 アレクサンドロス3世 マケドニア国王 (紀元前356年〜323年)はアリストテレスの弟子。 紀元前338年東方遠征を始め、アケメネス朝ペルシアを滅ぼし、中央アジア、インド北西部など広大な世界帝国をつくった。 彼の東方遠征と広大な帝国の建設を機会に東西に活発な文物の交流の場が開かれ、ヘレニズム文化がおこった。また ハーブやスパイスが交易品として盛んに取り引きされるようになった。
 
○ クレオパトラと香料 古代エジプト プトレマイオス朝最後の女王(BC69〜30年)
 美しさと知性、香料を使うことでローマの独裁者カエサル(シーザー、BC100〜44年)、その部下のアントニウス(BC82〜30年)の心をとらえた。
 
○ 新約聖書がまとめられる(100年頃)
 イエスキリスト誕生物語 東方から救世主をさがしにきた3人の博士がイエス•キリスト誕生の馬屋で黄金、乳香、没薬をささげた。 乳香(フランキンセンス)没薬(ミルラ)は神の薬を意味した。黄金は現世の王   
 *ナルドの香油 新約聖書の中にある「ナルドの香油」の一節は浸剤として利用されていたチベット地方にあるスパイク•ナルドという植物を油に浸出させたものであると考えられる。
 
○アーユルベーダ  
 インドで成立  世界最古の医哲学体系 「アーユス」は生命、寿命 「ベ−ダ」は科学のこと。伝承的に伝えられている部分をふくめると約3000年以上の歴史を持つといわれている。
 
○ 中国の本草学
 中国での薬物について書かれた最古の本は2〜3世紀の漢の時代にまとめられた「神農本草経」で後に5世紀末に陶弘景(456〜536年)によって「神農本草経集注」という形で再編纂された。 神農とは中国の神話にある農業神だが、漢の時代の伝説上の皇帝、炎帝とされる。これらが中国の中医学、漢方の成り立ちである。
 

(2) 中世のヨーロッパ、アラビア世界における香料、植物療法の発達
 

 中世になるとアラビアで精油の蒸留法が発明されました。精油の蒸留法は十字軍によってヨーロッパにもたらされました。
 
○ ヨーロッパの僧院医学、アラビアの精油の蒸留法の確立
 薬草、香草などを公に扱う権利を与えられたのは教会や修道院であった。 精油の蒸留は古代ギリシア、ヘレニズム文化にその起源がある。錬金術と呼ばれる技術のなかで完成されていったが、ヨーロッパでは錬金術が魔術的なものとの誤解もあった。しかしイスラム世界、アラビアでは肯定的に受け入れられ、精油の蒸留法が大きな発展をみた。
 
*イブン•シーナ(980〜1037)
 アラビア人、医学者、哲学者 精油の蒸留により芳香蒸留水を製造して医学に応用した。1020年頃西洋医学の基礎となった「医学典範(カノン)」を著し、17世紀ごろまで西欧の医科大学の教科書に使われていたほどの古典である。
 
○ ヒポクラテスの町 サレルノ 中世なかほどをすぎるとイタリアの港町サレルノはヒポクラテスの町と呼ばれるほど医学が盛んであった。 10世紀末には「サレルノ養生訓」などの著作はヨーロッパ全土にもたらされ、サレルノ医学大学のカリキュラムは中世の大学が模範とするほどだった。1140年にシチリア王によって医師の国家免許の制度が始められた。
 
○ 十字軍の遠征(1095〜1291)
 ローマ教皇が十字軍をエルサレムに派遣したさい、イブンシーナによる医学や精油蒸留法などはアラビアから十字軍によりヨーロッパへもたらされた。 イタリアやフランスでは香りに大きな関心が寄せられ、治療や美容のために精油や芳香水についての知識が拡大していった。
 
○ 若返りの水、ハンガリー王妃の水(ハンガリアンウオーター)
 14世紀ハンガリー王妃エリザベート一世は70歳を超え手足が痛む病気で悩んでいた。そこで修道院の僧がローズマリーを主体とした痛み止めの薬を献上したところ、病状は改善し強力な若返り効果を発揮したという。そして若さと美貌を取り戻した王妃がポーランド国王から求愛された。 内容成分に関してはいろいろあるが、すべてローズマリーとバラ水が含まれている。
 
○ 中世〜近世:大航海時代が始まる(1380—1600年)  
 ヨーロッパでは国王を中心とした大きな国があらわれ始めた。スペインなどの国々は新しい領土の発見のために船をつくり航海をした。また、香料や香辛料に関心をもっていた。
 

(3) 16世紀ごろからのハーバリストたちの活躍
 

 大航海時代となり東西の交流が活発となり、17世紀にはイギリスでハーバリストと呼ばれる人たちが活用しました。ニコラス・カルペッパーは占星術師としても有名です。
 
・ジョン・ジェラード(1545—1612年)
 ロンドンのホルボーンに薬草園を開いた。「(本草あるいは一般の植物誌)」1597年を著す。  
 
・ジョン・パーキンソン(1567—1650年)
 チャールズ一世につかえたハーバリスト。 「(広範囲の本草学書)」1640年を著す。この書は移住者とともに新 大陸に渡った書として有名。  
 
・ニコラス・カルペッパー(1616—1654年)  
占星術師として 医師として医業に携わり、薬草やハーブに関する知識も含めて総計79册にもおよぶ書物を書き、翻訳も行った。当時の医者を批判し、自らの健康は自ら守ることを主張した、「The English Physician」は著書として有名で、この書も新大陸に渡った。
 

(4)近世: ケルンの水 → オーデコロン → 香水時代へ   

 
○ケルンの水 → オーデコロン  ジョバンニ•パオロ•フェミニス 
 ドイツのケルンに移り住んだイタリア人 。17世紀末「オーアドミラブル=すばらしい水」を売り出した。 すばらしい水は「ケルンの水」のニックネームで呼ばれるようになった。 これは最古の香水であり、のちに1742年に登録商標となった「オーデコロン」(フランス語への読み替え) である。これは、香水としてだけではなく医薬品(胃薬)としての役割もあった。
 
○ 香水時代と貴族
 16世紀から17世紀にかけてイタリアやフランスのプロバンスでかんきつ系の植物から香料がつくられはじめた。中でもプロバンス地方のグラースという町が中心。貴族の間ではにおいつきの皮手袋が流行しのちに現在のような液体のものとなり、安価な香水ビンが使われることになってからフランス国民にひろまった。この頃の香水はハーブや花の精油が原料であった。
 

(5)近世〜現代: 近代化学の発展

 
○ 合成の香料 薬品がつくられる
 19世紀の終わりごろから香水は現在のような合成香料が使われるようになった。 おなじころ薬用の植物の有効成分が分離精製されるようになり、やがて同じ成分を鉱物原料から合成できるようになった。化学工業の技術により植物からではなく、化学工業的にいろいろな作用や効果のある薬が作りだされるようになった。
 

(6) 現代:アロマテラピーの登場と発展  

 
○アロマテラピーという言葉が造られる。(ルネモーリスガットフォセ により)
 最初は精油の薬理作用(殺菌、消炎など)の研究としてはじまった。
 
・ルネ・モーリス・ガットフォセ(1881〜1950):
 フランスの化学者  化学実験中に事故で火傷を追い、とっさに目の前にあったラベンダー精油を  かけたところ、みるみる火傷が回復した。 こうした経験をとおして精油の治癒力を再発見して近代医学に取り入れ、アロマテラピーという概念を規定した。(1937年「aromatherapie」を著した。     
 
・ジャン・バルネ(1920—1995年):
 フランスの医師。  第二次大戦•インドシナ戦争に従軍した。精油を使った芳香薬剤を用いて負傷者たちの手当てを行い治療で成果をあげた。1964年 戦時中自らの臨床活動でアロマテラピーを実践した結果をまとめ、「AROMATHERAPIE」を著す。
 
 ○香りの治療的効果と神経系への作用の研究 イタリアでの精油の研究  
 イタリアでは医師レナート・カヨラとジョヴァンニ・ガッテイーが1920年から1930年にかけて精油の研究に取り組んだ。 その内容は精油がもつ精神と神経システムに与える影響(心理作用)と治療的効果、スキンケアへの応用についてであった。 またパオロ・ロベステイが1970年代柑橘類の精油とその加工品が神経症やうつ病に用いると有効であることを発見した。この研究は精神科の臨床例としては世界最初のものであるといわれている。
 
 *日本での研究  
 鳥居鎮夫博士(東邦大学名誉教授) 随伴性陰性変動(CNV波)とよばれる特殊な脳波を用いて香りの興奮作用、鎮静作用を研究した。 このとき使われた香りはラベンダーやジャスミン。
 
○イギリスにおけるホリステイックアロマテラピー
 「全体的」「包括的」などと訳される。身体におこったトラブルをその部分だけの問題と捉えず、心を含めた全体的、全人格的なものとしてアプローチすることをいう。  
 
・マルグリットモーリー :
(1895〜1968)1950年代から  1960年代に活躍した生化学者 。アロマテラピーに関する知識を心身の美容と新しい健康法の分野に用いて普及を進めた。モ−リ−はアロマテラピーをマッサージと組み合わせたホリステイック療法として確立し、精神と肉体のアンバランスに対して個人的な処方によって、そのバランスを正常化するという方法論を示した。 イギリスにおけるホリステイック・アロマテラピーの基礎を築いた人物である。彼女はこの研究成果を1961年に「最も大切なもの…若さ:Le Capital ’Jeunesse’」を著し美容の国際的な賞である「シデスコ賞」を受賞した。   
 
○イギリスにおけるホリステイックアロマテラピーの大衆化 1960年代〜1980年代にかけて、シャーリープライス、ロバート・テイスランドたちはアロマテラピースクールを開設。卒業したアロマセラピストたちは大衆のさまざまな場所で活躍する。
 
(7) 日本でのアロマテラピーの普及     
 書籍の翻訳により日本におけるアロマテラピーの普及が始まったが国内に も本格的スクールが活動を始めるようになった。
 参考:日本にアロマテラピーを最初に紹介した本:アロマテラピー<芳香療法>の理論と実際(ロバート・テイスランド著)
 

 4.アロマテラピーの作用と効果
 精油が身体に作用する経路

 精油の香りやトリートメントでの触れられる体験などは、どのように私たちの脳でうけとめられ、心と身体にどう作用するのでしょうか。アロマテラピーでは、この作用がとても大切です。「脳」のしくみや、心と体の関係を学び、嗅覚がどれほど大切なものか考えてみましょう。
 

 (1) アロマテラピーと関係するおもな脳のしくみ

 「脳」は私たちの感情や行動を支配する大切な器官です。しかし、そのしくみはとても複雑で、すべての働きが解明されているわけではありません。ここでは、アロマテラピーと深いかかわりがある脳のしくみと働きについて説明します。   
 人の身体には神経系というものが備わっていて、次の二つにわけられます。
  
中枢神経系:身体の各部(末梢)からの刺激を受け入れ、対応する中心的な役割を担う部分。(脳、脊髄)   
末梢神経系:中枢神経系と身体の各部(末梢)を連絡する神経。 (脳神経、脊髄神経、自律神経系)   
 
脳は中枢神経系です。脳の仕組みを簡単に説明します。

○ 大脳 大脳皮質(新皮質) ・ 頭の表面に近いところにある ・ 知的活動  考えたり、判断したり、行動したり、言葉をはなしたりなど (古または旧皮質)
・ 新皮質に覆われている。表面からは見えない。大脳核とともに大脳辺縁系を形成。
・ 本能的な活動
  食欲 性欲 ・ 情動、記憶を支配   怒り 恐怖(不快)安心 リラックス(快)昔の記憶
 
○ 脳幹— 間脳(視床、視床下部) 下垂体 中脳、橋、延髄     
 大脳半球と脊髄をつなぐ 延髄— 心泊、血圧、呼吸など生命維持にとって重要な中枢
・橋 — 大脳と小脳の情報を中継する
・中脳 — 視覚、聴覚の情報の中継地
・間脳 — 視床は脊髄 間脳を通ってきた感覚情報を大脳皮質(感覚野)へ送り込む
・特に大切な視床下部 自律神経をコントロールする働きをもち  体温、水分 睡眠 食欲 性欲など本能行動の調節や、内分泌(ホルモンの分泌)をコントロールしている。
 
○小脳  身体運動のバランスを保つ
 
◎ 大脳辺縁系とは 大脳辺縁系とは古皮質や旧皮質が間脳や脳梁を環状に取り囲みこれらの部分を縁どっているという意味(嗅球、嗅索、扁桃体、海馬など含まれる。)
 

(2) 大脳辺縁系とアロマテラピー 

 アロマテラピーは嗅覚を通じて香りの信号が大脳辺縁系や視床下部に伝わり、それによって自律神経の働きが調節されることにより身体の機能が整えられるという自然療法です。においを嗅ぐことにより、人体を維持、調整するシステムである自律神経系や、内分泌系、免疫系に作用します。
 
 アロマテラピーの嗅覚 (感覚器)  鼻の上部 →   嗅細胞 → 嗅球 → 嗅索 →大脳辺縁系→視床下部  (嗅上皮)   (嗅毛) (脳の内部)  
 
 ニオイ物質を嗅ぐ → 自律神経系 内分泌系 免疫系
 
○ 香りの刺激は鼻から大脳辺縁系に直結して、古い記憶や本能行動と結びついて視床下部へ伝わり、身体に生理的な反応があらわれる。
 
○ 嗅覚は五感の中で味覚とともに「化学的」な感覚と呼ばれ「原始的」な感覚 。
 
○楽しい記憶が思い出されたり、リラックスやリフレッシュができたり、悲しみが軽減したりという効果がある。
 
 

(3) 身体に作用するルート

 精油が心と体に作用する経路は、大きく分けて次のものがあります。
 

○ 感覚器(嗅覚)から脳へ伝わる経路             
 
嗅上皮 精油分子→嗅毛→嗅細胞→→→嗅神経→嗅球→嗅索→大脳辺縁系→大脳皮質          電気信号               (嗅覚野)
 
 空気中に蒸発した精油成分は、空気を吸い込むことで、鼻の奥にある鼻細胞に届き、電気信号に変えられて大脳に送られ、「におい」として認識される。 嗅覚は感覚として認識されるのではなく、身体の生理機能をコントロールしている部分に関係が深く、直接的に身体に関わっている。
 
○ 血液循環により全身に伝わる経路
  血液循環により全身に伝わる経路には以下の3つがあります。
 
① 呼吸器 ・ → 気道の粘膜→血管→肺(肺胞) → 血液循環をして全身をめぐる   
 
②皮膚から    
 皮膚の表面に対して、皮膚への塗布に精油成分の種類によっては、肌の保湿成分を補ったり、皮膚の弾力を回復したりする。 さらに 精油の芳香分子は非常に小さいの で、表皮、真皮に浸透し、末梢血管やリンパ管にはいり、全身を循環する。

 
 
③消化器系による経路   
 経口→消化管粘膜→血管→血液循環によって全身をめぐる。
   
  *精油の飲用について(当サイトではすすめられない。)
 ヨーロッパでは、薬用として精油を飲用が認められているところがあります。書籍にもそのような処方が記載されているものもあります。
 しかし日本国内では、精油は医薬品にも化粧品にも該当せず 「雑品(雑貨)」として扱われており品質管理にバラツキがあります。また、成分が濃縮されており原液での使用は大変危険です。そのため、社団法人日本アロマ環境協会では、飲用をおすすめしていません。当サイトでもその方針に従っております。詳細については別の回に取り上げる予定です。

5.アロマテラピーを実践する。
アロマテラピーを利用する方法 

 ここでは、普段の生活でアロマテラピーを利用する代表的な方法をご紹介します。体調管理からビューテイーケアまで幅広く楽しめます。ここでは日常で簡単にできる代表的な利用方法を紹介すします。
 

 

(1)芳香浴法

 精油を拡散して、手軽に香りをたのしみながら心身のバランスを整える方法です。楽しみかたには各種ありますが、ここでは4つの方法をご紹介します。
 最も一般的な方法は芳香拡散器(アロマデイフューザー)を使う方法です。
 

①コットンやハンカチを使って
 ティッシュやコットン、ハンカチなどに香りを垂らして側において香りを楽しむ方法です。オフィスのディスクまわりにおいたり、枕元に置いたり、バックの中に入れたりして、手軽に活用できます。 
   精油量の目安 1~2滴
 
②お湯にたらして  
 マグカップやボウル、洗面器などに半分ほどお湯を張り、精油をいれます。蒸気とともに香りをすばやく広げることができます。
    精油量の目安 1~2滴
 
③芳香拡散器を使って
 市販のアロマデイフューザーを使うと、室内に香りを拡散させることができます。ミスとタイプのデイフューザーやアロマランプなど、様々な種類があります。
 
   精油量の目安 1~5滴
   
いろいろな芳香拡器
 ・キャンドル式芳香拡散器(オイルウオーマー)
   水をはった上皿に精油1〜5滴      
 (注意)   
   ・風のない安定した場所におく        
   ・子どもやペットの手のとどかないところにおく        
   ・使用中はそばをはなれない        
   ・器具にあったキャンドルを使用する        
   ・取扱説明書を読むこと  
   ・おやすみ前は消すこと     
 ・ 電気式芳香拡散器(アロマライト,デイフューザー)   
   電気の熱や空気などで精油を香らせる       
    精油1〜5滴
   (注意)取扱説明書を読むこと 
 
*芳香浴の注意点
・同じ香りの中にいると香りを感じにくくなります。部屋の換気をしながら行いましょう。
・精油の量は、部屋の広さ、精油の種類による香りの強さまどを目安に調整しましょう。
・香りの感じ方は個人差があります。人が集まる場所では、置き場所や香りの強さ、精油の種類などに配慮しましょう。
 
芳香浴についてはこちらもご覧ください。 
アロマディフューザー:手軽にできる芳香浴の方法
 
 

 (2)沐浴法

 お風呂に精油をいれて入浴することをアロマバス(沐浴法)といいます。入浴による温熱効果とリラクゼーション効果との 相乗効果が期待できます。
 入浴は温熱効果により血行を促進して新陳代謝を高めるとともに、浮力により筋肉の緊張をとき、凝りや疲労を和らげます。そこに精油の薬理的、心理的効果を加えたものが沐浴法です。
 浴槽に精油を落とすと、前回行った身体に作用するルート 
  ①嗅覚によって 
  ②吸入によって 
  ③皮膚からにより
 などにより精油が人体に作用し、様々な効果を起こすと考えられています。

 
*相乗効果とは
 二つ以上の要因が同時に働いて、個々の要因がもたらす以上の結果を生じること。シナジー。「相乗効果を上げる」
 
いろいろな沐浴方法
 
 1)全身浴法 
 浴槽に湯を張り精油を5滴以下(心地よいのであればたったの1滴でもよい)いれてよくかき混ぜる。     
 ・リラックスを目的 ややぬるめのお湯で肩までつかる。
 ・リフレッシュ やや熱めのお湯で短時間で切り上げる。 (モーニングバスなど)
 
2) 半身浴法   
 浴槽にみぞおちまでつかるくらいにややぬるめのお湯を張り、3滴 以下の精油を落としよく混ぜる。汗がでるくらいゆっくり入浴する。   
 よくかき混ぜ上半身が冷えないようにタオルを肩にかけて汗がでるまでつかる。
 
3) 部分浴法    
 手、足、腰などの身体の一部のみをお湯につける方法。 全身浴よりも手軽にできるのが部分浴の魅力であり、入浴できない時にもよい。
 また、ちょっとした気分転換にもなる。手や足を温めることに より血液循環を高め全身を温める作用があり代謝を活性化することができる。  
 
①手浴法(ハンドバス)  
 洗面器や洗面台のシンクなどにお湯を張り3滴以下の精油を落としよく 混ぜる。  
 両手の手首が十分につかるまで入れてゆっくりと手を温める。  
 
 
②足浴法(フットバス)  
 深めのたらいやポリバケツなどに半分くらいのお湯を入れ3滴以下の精油を落としよく混ぜる。  
 足首から膝までを浸す。

 
*沐浴法での注意事項
・精油の香りや刺激の強さにより、滴数を加減しましょう。
 
 
・精油は水に溶けにくい性質があるので、アルコールで希釈することをお勧めしています。皮膚の弱いかたは植物油で 薄めたり天然塩などに混ぜて使用しましょう。
 
 
・ 精油を使用して皮膚に何らかの刺激を感じた場合はすぐに洗い流し ましょう。
 
・ 柑橘系やスパイス系の精油は皮膚刺激を感じることがありますので 使用する滴数を少なめにしましよう。 
 
・長時間の沐浴は身体の負担になる場合がありますので、体調にあわせて 沐浴法を行いましょう。
 
・お年寄りや既往症があるかたには湯温42°C以上での全身浴は循環器への負担が増しますので、注意して行いましよう。
 

(3)アロマトリートメント

 トリートメントオイルでケアする方法です。精油を使い分けることでいろいろな効果が期待できます。アロマテラピーでは、植物油で精油を希釈したトリートメントオイルを使用してマッサージをすることをアロマトリートメントと呼びます。
 アロマトリートメントは、精油の香りとリートメントによる相乗効果が期待できます。ストレスによる緊張をやわらげ、自律神経のバランスを整える他、血液やリンパの流れを良くし、余分な水分や老廃物を排出してくれます。
 植物油との相乗効果で美容にも役立ちます。
 

(4)その他

 その他のアロマテラピーの利用法には以下のものがあります。
 
①吸入法
・ 精油成分を吸収し 呼吸器系の不調を緩和する方法        
 ハンカチ ガーゼなどに 精油1〜3滴
 
 
・蒸気吸入法  
 洗面器 マグカップに熱めの湯はり精油3滴以下
  
(注意)    
・粘膜などを刺激することもあるので長時間の吸入はさける    
・せきやぜんそくの場合は蒸気吸入法はさける    
・蒸気吸入法は目を閉じておこなうこと
 
②湿布   
・冷湿布法  
  急性トラブルに
  洗面器に水をはり精油を3滴以下落としタオル布を浸ししぼり湿布する。   
 
・温湿布法  
  慢性トラブルに
  洗面器に湯をはり精油を3滴以下 落としタオル布を浸ししぼり湿布する。
        
(注意)
 ・肌の状態や反応に応じて湿布の時間を調整する 
 

(5)アロマクラフト

 アロマクラフトととは、広い意味では香りのある日用品のことをいいます。ここではアロマテラピーで使用する精油を利用した日用品をアロマクラフトとよんでいます。日頃使用する化粧品や入浴剤、芳香剤などに精油の香りを加えることにより、簡単にアロマテラピーを楽しむことができます。アロマクラフトの詳細については次回また説明します。
 

6.アロマテラピーの関連法規

 アロマテラピーを楽しむうえで知っておきたい法律について簡単に説明します。知らなかったで思わぬトラブルにならないように、ルールをきちんと守りことが大切です。主な、関連法規を紹介します。ちょっと条文は古いかもしれませんが参考にしてください。
 

 

(1)アロマテラピーの法律について

①医薬品医療機器等法(旧薬事法) 
 精油を化粧品や医薬品などと混同しない。精油や作成したアロマクラフトなどを使用(特に販売)する場合は扱いに注意することが必要です。
 
(重要な事項) 
・医薬品、医薬部外品、化粧品、医療器機として誤解されるような表示や 広告、口答での説明をして販売、授与してはならない。
×ラベンダー精油は不眠症に効果があります。
×カモミール・ローマン精油には保湿作用があります。
 
・医薬品、医薬部外品、化粧品、医療器機などの製造業の許可を受けて いない者が業として製造(小分けを含む)してはならない。   
 
・薬事法第十三条(製造業の許可)
「自分が使用するために自分で化粧品を作る」ということが原則で、(自己責任原則)それを無許可で作り、販売、授与することは禁止 されている。
個人が精油を使ってハンドクリームや石鹸などの手づくり化粧品などを 作り友人や知人にプレゼントすることは、薬事法上では違反と言いれないものと判断し、プレゼントは可能であると解釈する。  
 
②製造物責任法(PL法)
 製造物の欠陥により被害が生じた場合、その製造物責任者などに賠償責任が生じる。基本的な考え方は消費者の保護と救済。 たとえば、精油のビンのキャップに欠陥があり、精油が自然に漏れ出て衣類や家具を汚し損害が出た場合、これは、製造業者の責任となる。  
 
➂消防法 
「危険物の規則に関する法律」 精油は引火する可能性が高いのでショップや輸入業者として扱う場合は通常の量(例えば10mlビン数百本くらい)であれば法的な規制を受ける事がないが、指定数量をこえて保管する場合は規制をうけることになる。
 

(2)トリートメントなどアロマテラピー行為に関する法律  

➀医師法 精油を薬のように使ってはいけない。医師以外は診断したり、治療をしてはいけない。(医師法 第十七条)  
 
➁あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などに関する法律
免許のないものが あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうなどの医業類似行為を職業として行ってはいけない。 (あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師に関する法律 第一条、 第四条、第12条) アロマテラピートリートメントは人体に対して危険を伴ったり健康を害するおそれがないものであればサービス行為として違法性はない、「職業選択の自由」を考慮。  
 
➂獣医師法
自分のペットにアロマテラピーを自己責任の範囲で行う分にはよいが、獣医の領域に触れて行う診療行為(診断と治療)を行えば獣医師法違反となる。  (獣医師法 第十七条)  

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